下見

家見学の日がやってきた。
午前中に一軒目。
並木道に面した家の前に愛想のいいお兄ちゃんが待っていた。
さっそく案内してもらう。
門を開けてすぐ家のドアだ。
今まで住んでいた家は私道に面していて、
私道の入り口に電動の門がついていた。
その入り口を使うのはうちのほかは
隣の懇意にしていたおじさんの家と
反対側の隣家の駐車場のみ。
公道から家まで程よい距離があって
守られている感じがあって安心できた。
それに比べるとこちらは門から5秒で玄関だ。
こんなの日本にいたらごく普通かもしれないけど、
ちょっと不安になる距離だ。

中に入ってまたびっくり。
調度品がおきっぱなしなんですけど?
家具だけならまだしも、家族の写真なんかも飾りっぱなし。
もしかして持ち主は夜逃げでもしたの?
電化製品などの一昔前のものという感じで
だいぶ時間がたっている感じがする。
庭はとても広く、それは子供たちは気に入ったようだった。
こちらも荒れ放題。
さらに家の中を見回すと、
テーブルの上には開封したままの請求書なども。
この家、怪しい?
持ち主はいつからいないのか聞いてみたら、
もう7,8年になるとのこと。
確かにそんな感じがする。
もし入居するとなったら
これらの調度品は全部引き払ってくれるということ。
(当たり前だ)
一通り家の中を見てまわり、
一週間以内に返事すると言ってあとにする。

車に戻ってからさっそく協議。
「あの家、どう思う?」
「最近誰か来てるよ」とダンナ。
台所に日付の新しいパスタソースがあったのだそうだ。
多分持ち主が時々換気したりしているのだろう。
それにしてもどうしてそこに住まないのか?
住まないなら住まないで、あの家具はどうにかならないのか?
決して悪い地区ではなかったのだけど、
家はなんとなく暗い感じだった。
この家は断ろう、と決める。

さて午後に二軒目の見学。
今度は不動産屋さんで待ち合わせ。
担当のおばちゃんと一緒に家を見にいく。
まだ持ち主が在住していた。
急に見学することになった非礼を詫びて
さっそく見せてもらう。
今まで住んでいた下町とは一転して、
坂の上の高台の家。
間取りは今までとほぼ同じ。
ただ全体的に少し小ぶりになるかな。
子供たちはこの家の子どもたちと遊んでいた。
私が気に入ったのは主寝室からお風呂場、台所が
ドアでつながっていて動きやすいこと、
洗濯機を置いてある部屋から庭に出ることができて
晴れた日なら外で洗濯物が干せるということ、だった。
持ち主はご主人がイタリア転勤が決まって
こちらも引越しの準備でばたばたしていた。
ご主人はすでにイタリアに行ったあとだったが、
対応してくれた奥さんが学校の先生で
しかも英語がしゃべれたので、何かとスムーズ。
私は奥さんと引越しのことや学校のことなど
よもやま話に花を咲かせる。

庭を見せてもらいながら不動産屋のおばちゃんが
「どうする?すごくいい物件だと思うけど?」と聞いてきたので、
家賃が妥当か会社に聞いてから返事することにした。

ゆりちゃんたちは一軒目の家は嫌い、
二軒目の家がいいと言っていた。
まだ二軒しか見ていないので、
保留してもっと他の物件をあたることもできる。
しかし、私はすでに疲れていた。
それに二軒目にして結構いい物件を見つけたじゃないか。
会社がOKしてくれたらここでいい。
幸い今までの学校にも
学区外ではあるけど車なら5分。

その後は早かった。
会社からOKをもらって不動産屋に返事。
物件を押さえてもらう。
契約は例の代行業者がやると言うので、
その連絡先の交換。
とりあえずの目処がついてほっとする。