しらみ騒動

それは学年末が終わった直後に始まった｡

夏休み第一日目、ゆりちゃんがなんだか頭をかいている｡
うちは湿疹持ちだし､汗っかきだから、
頭なんてしょっちゅうかいているのだけど､
フランスはしらみが多いと聞いていたので､
なんとなくいつもの習慣で頭をチェックした｡
すると…
髪の毛に点々と白っぽいものがついている｡
ふけかな？とはたいてみても取れない｡
指で髪の毛をしごくようにして取ると､
しずくのような形をしたものが取れた｡
取ると黒っぽく見える｡
大きさ約一ミリ｡
そんなのがいくつもついている｡
これ、何？？？
まさか､しらみの卵？
びっくりして馨とらんちゃんの頭も調べるが､
とりあえず二人からは見つからなかった｡
薬局に行き､ゆりちゃんの頭を見てもらうと､
やはりしらみだとのこと。
しらみ退治のスプレーと専用シャンプーを購入｡

次の日､centre de loisirsに連れていく｡
先生にしらみがいることを告げるとなにやら言っていたが､
大丈夫と言うので置いてくる｡
しかし夕方迎えに行ったら別の先生に
「他の子に移るから､いなくなるまで来ないで｣と言われる｡
そうか…そうだよな…。
がっかりして帰る｡

当然の成り行きとして､一緒に犬の子供のように
群れている馨とらんちゃんの頭からも見つかる｡
ついにしらみ本体も発見｡
逃げ足はそんなに速くないが､すぐ髪の毛の間に逃げ込むので､
色がそっくりでなかなか捕まえられない｡

しらみ退治は、まずスプレーを全体にかけて３0分おき､
その後専用シャンプーで洗うように言われたが､
洗ったあと頭を調べているときに
まだ生きているしらみを見つけたときはがっかりした｡
その旨薬局で告げたら､スプレーが効いていないわねえ、とのこと。
（その後インターネットで､スプレーをした後
よくとかすらしいというのが分かる）
いなくなるまでどのくらいかかるのか？と聞いたら、
「一週間か二週間か…わからないわね」と頼りない返事｡
布団の消毒はどうやったらいいのか聞いたら､
枕を70～80度で洗うように言われた｡
布団はそんな必要ないとのこと。

確か目の細かい櫛でとかしてしらみや卵を取り除くんだったな、と
わずかな知識を総動員｡
しらみ専用のくしを購入する｡
しかし、これがあまり効果なし｡

さらに運の悪かったことに､美容院に行き損ねていたので､
ゆりちゃんと馨はけっこう髪が伸びていた｡
少しばっさり切ればもっと早く退治できるかも､と
美容院に連れて行ったが､しらみがいると告げたとたん､
「他のお客さんに移るかもしれないから､いなくなったら来てね｣と
またまた拒否される｡
もうどこにも行き場がないような、閉塞感を感じる｡
しょうがないから家で切るか、と思ったが､
こういうときに限ってカット用のはさみが見つからない｡
もう､裁ちばさみで切っちゃおうか？
インターネットで調べたら､髪の長さはあまり関係ないと
なっていたので、切るのは断念する｡

くしが効果ないので､結局自分の手で地道に取っていく｡
朝はもちろん､いつでも気になったときは探す｡
一日中しらみ探しをしているような気がしてきた｡
でも探さないと落ち着かないのだ｡
今取らないと、卵が増えるような気がして…。

頭のしらみ退治と平行して､
布団の消毒もする｡
薬局では枕だけすればいいと言われたが､
枕は形ばかりではずして寝ていることが多いので､
シーツも毎日取り替える｡
バスタオルも毎日取り替え､共に高温洗濯、即乾燥機｡
布団も洗えないものの掃除機をかけ､
天気が回復してからはこっそり干した｡
ベッドも掃除機をかけ､部屋も丹念に掃除｡
部屋のほこりとしらみって関係あるのか？
これってダニのほうじゃなかったか？と
半分混乱しながら…。

一週間ほど過ぎ､ようやく恒例のしらみ探しをしても
たまに卵が一個だけ見つかるくらいになる｡
これなら、もう過去の取りこぼしの範疇だろう｡
centre de loisirsも再開｡
一週間ぶりに行ったら､今度はもーふぃーぬがしらみにかかっていたが…。
美容院も再度予約して無事髪を切る｡

どこで移ったのか､いまだに不明だが､
学校や幼稚園など集団生活の場では移りやすい｡
また、プール、ジムなどの更衣室で移ることもある｡
今回一番疑わしいのは､幼稚園が学年末で終わってすぐの週末､
ソルド（バーゲン）に行ったのだが､
そこで帽子を買うために子供たちは試着をしていたのだ｡

日本でも時々しらみはあるとのことだが、
フランスは珍しくないので､どこでも悪者扱いされないのが幸い｡
薬局には必ず専用用品が売っているし､
スーパーのシャンプー売り場にも普通に並んでいる｡
マリーナには｢学校に行っていればかかって当たり前よ｣と言われ､
どれだけ救われた気がしたか…。