コンセルヴァトワール

コンセルヴァトワールと聞いて、くらっとくるあなた、
多少の違いはあれど、クラシックをかじっていますね。
そうです、私もくらっと来てしまう一人です。
コンセルヴァトワールとは、音楽家や俳優を養成する学校。
なんとうちから徒歩圏内に地元のコンセルヴァトワールがあるのです。
ここは音楽家養成学校のほうです。
そんなのがあったら、まず自分が入れるかどうか確かめたくなります。
恥ずかしながら、フランスに着いてまず最初に確かめました。
…ダメでした…
「若い音楽家養成のための学校」で、26歳までしか入学できません。
しかし、子供向けのクラスもあるとのこと。
ゆりちゃん、音感もリズム感もあるし、いいんじゃない?
小学生から入れるというので、一年待ちました。

申し込み

毎年5~6月に募集広告が貼られます。
申し込みは直接コンセルヴァトワールの窓口へ。
市内に住んでいる場合、
・証明写真1枚
・切手5枚(一番出回ってる0.46ユーロのやつ)
・carte de quotient familialのコピー(収入によって学費が違う)
・居住証明(EDFなど公共料金の最新の請求書)のコピー

を持って行きます。
市外の人でも申し込みできます。
バカな私は下二つの書類を忘れてしまいましたが、
このへんは融通の利くフランスのいいところ、
「ごめんなさ~い、忘れました」の一言ですんでしまいました。
(ただし、いつもこの手が使えるわけではない)
「コンボカシオンが届くから、それを持ってクラス決めに来てね」と
言われたのですが、コンボカシオンって何?
と思ったら、通知状のことでした。

クラス決め

9月頭には新年度のパンフレットも届き、胸わくわく(私だけか?)。
クラス決めの日はたった一日、しかも一時間だけ。
なぜこんなに短いの?と思いつつ、
せっかくだから早く行くか、と開始時間ぴったりに行きました。
私の前には10人ほど待っていました。
まあこれならすぐ順番が回ってくるだろうと思いましたが、
なぜだか前から待っている人よりあとから来た人のほうが
先に部屋に入っていったりしています。
どういうこと?とよく観察してみたら、
どうやら来た順番ではなく、登録の名前のABC順で呼んでいるようなのです。
そんなの、コンボカシオンには一言も書いていなかったぞ!
恐るべし、コンセルヴァトワール!
これは決してフランスの一般的原則ではないと思います!
というわけで、アルファベッドのかな~りあとの方の我が家は
一時間以上待ちました。
待って何するかって言えば、
希望曜日を伝えて学費を払うだけです。
こんなつまんないことに一時間も待たせたのかー!
しかもくだらない方法のために!
おまけに呼び出し係のおばちゃんの声が小さい上、
待ちくたびれたお子様たちの阿鼻叫喚!聞こえな~い!
とうとう待ってるママたちの伝言ゲームになりました。
おばちゃんが名前を言うと、次々にママたちが後ろの方の人に
伝えていくのです。

学費

さて学費ですが、市民は優遇されています。
学校や幼稚園の給食費の算出でも使われる
quotient familialに基づいて金額が決まります。
我が家は130ユーロちょっと。
これで一年分です(週一回45分のクラス)。
申し込みで市外に住んでいる人でも申し込めると書きましたが、
学費は高くなります。

いきなり曜日変更

うちは送迎のことも考えて土曜日のクラスを取りました。
ところが、すぐ次の日に電話がかかってきて、
なんだか土曜日のクラスが出来なくなったので、
他の曜日に替えてほしいというのです。
火曜日はどうか?と聞かれました。
平日は夕方まで学校があるので、
どの日もそのあとのクラス。
それじゃ大変かとせっかく土曜日にしたのに…。
他の曜日もまだ空いているようでしたが、
もうそこにはetudeを入れてしまったので、
結局先方の申し出どおり火曜日のクラスに変更しました。

初めてのクラス

初日、どきどきしながらコンセルヴァトワールへ。
この日が今年度の最初の日だったこともあって、
混みあっています。
どこの教室でやるのか聞かされていなかったので、
受付横に貼り出されていた表を見てみたけれど、
どの先生も教室を長めに借りているのか、
始まる時間ちょうどから埋まっている教室がなかったので、
受付で聞いてみました。

私「18時30分からの音楽入門のクラスはどこですか?」
受付「みんな18時30分から始まるんだからわかんないわよ!」
…と言いつつ台帳をめくる。
いや、そんなこと言われても、今日ある音楽入門のクラスは
18時30分からの一つしかないはずなんだけど…。
受付「先生の名前は?」
私「わかりません」
受付「わからないの?」
私「ええ、だって土曜日から火曜日にクラスが替わったんですよ!」
(とちょっと強気に出てみた)
受付「右のドアの奥の部屋に行ってみて」

いくら混んでいるからって、この対応はないでしょう!!

行ってみたところも教室が一つではないので、
またもやうろうろ。
ゆりちゃんはむっとしているし。
ふと気づくとゆりちゃんと同じくらいの子供たちが
入っていく教室があったので、
そこにいた先生らしき人に聞いてみたら、
たまたまそこがゆりちゃんの教室でした。
ほっと一安心。
生徒は10人足らず。
終わるまで教室の外で待ちました。

終わってからゆりちゃんに聞いたら
「面白かった。歌を歌った」と言っていました。
「次はいつ行くの?」と聞いてきたくらいなので、
相当面白かったのでしょう。
親の趣味で入れた手前、ちょっとほっとしました。
もらってきた持ち物リストには

透明ポケットファイルと筆箱(色鉛筆と鉛筆、消しゴム)

とありました。

中間成績が来た

3月頃にコンセルヴァトワールから手紙が。
何かと思ったら中間成績です。
やはりコンセルヴァトワール、ただのおけいこではなかった!
もっとも今のゆりちゃんたちのクラスは明らかに
「おけいこ」のレベルですが…。
採点は20点中16点ですから8割。
そんなに悪くありません。
今のクラスは希望すれば誰でも入れるクラスですが、
コンセルヴァトワールにはよくオーディションの告知が貼ってあります。
だんだん上のクラスになると黙っていても入れるわけではないのでしょう。
そしてこの成績がその後の進路を大きく左右しているのでしょう。
ということは、もちろん年度末にもう一度成績が届くんでしょうね。

2年目


結局一年目は年度末のテストもなく、
最終日はお菓子持ち寄りパーティーで和やかに終わる。
そこで先生と話をしたら
「2年目からはテストがあるのよ~」とのこと。
「ところで来年も続けるの?来年は週2回になるのよ。知ってる?」
…全然知りませんでした。
そのときは本格的だなあ、くらいにしか思わなかった。

そしてやってきました、2年目のクラス決め。
クラスの選択肢は去年より多かったのだが、
私のフランス語の日、というか、
フランス語に行くためにベビーシッターさんに預けられる日を考慮したら、
選択肢は限られた。
パンフレットをよく読むと、
今年は週2回の45分授業に加え、
週1回合唱のクラスもある。
つまり週3回コンセルヴァトワール通いということだ。
エチュードにも通わせたかったので、
エチュードとコンセルヴァトワールが半々になるように、
さらにコンセルヴァトワールだけ固まらないように、
週全体に分散するように考慮。
そうしたら、去年と同じ先生のクラスは取れなかった。
今度は男の先生のクラス。
ゆりちゃん、大丈夫かな…。
今年わかったことだが、2年目以降の外部募集は欠員のみ。
CPから始めることが大事だったらしい。

クラスが始まる日、先生とご対面。
想像と違って感じのいい優しそうな先生。
初日なのでいろいろ説明があったが、
一番印象的だったのは
「学校の勉強は必ず毎日やらせてください」
というのだった。
週3回もコンセルヴァトワールに通うのだ、
疲れて勉強どころではなくなってしまうことを恐れてだろう。
私もそれが心配で大変だけどエチュードも続けさせている。
両立って難しいね。

幸いゆりちゃんは今度の先生が気に入った様子。
今年の持ち物は
クリアファイルホルダーと五線譜、筆記用具。
さっそくト音記号、ヘ音記号の書き方を習ってきた。
フランス語ではla cle de Sol(ら くれ ど そる)、
la cle de Fa(ら くれ ど ふぁ)と言うそうだ。

クリスマスコンサート


週三回とハードな通学にもかかわらず、
ゆりちゃんは楽しく通っている。
水曜日の合唱のクラスはクリスマスコンサートがあると
いうことを聞いていた。
コンセルヴァトワールは毎年地元の教会で
クリスマスコンサートを開いているので、
私はてっきりそのときに子供合唱として
参加するのだと思っていた。
初めてのコンサートが教会か~、いいな~。
ところが年末が迫ってきてよーく話を聞くと、
そのコンサートと曜日が違う。
どうやら初心者お子様クラスは
コンセルヴァトワール内のホールでコンサートを開くのだそうだ。
まあそうよね、そんなもんよね。
幼稚園でもよくあるような催しということだ。
と、たかをくくっていた私だった。

当日は18時からリハーサル、19時から本番。
コンセルヴァトワール内のホールとはいえ、本物のパイプオルガンつき。
リハに行ってみると、人数は少ないが
子供のオーケストラがリハしているぞ!
ということは、オケ伴奏つきか?
なんだか本格的じゃないか。
舞台に上るゆりちゃんはもういっぱしのコンサートアーティストだ。
舞台人生の長かった(?)私、すでにほろり。

本番はホールからあふれんばかりの観客の数!
コンサートはいろんな楽器のアンサンブルと
子供たちの合唱を交互に進められた。
もちろん、合唱の伴奏をするときもある。
時々、楽器の説明も入った。
もしかして子供たちへの楽器紹介も兼ねているのか?
というのは、この子供たち、来年度からは
各自好きな楽器を選んで楽器を習い始めるのだ。
例年、ピアノ、バイオリン、チェロ、フルート、クラリネットは
希望者多数でウェイティングが出るらしい。
希望を出すときも第三希望まで出さなければならない。
今回出てきた楽器はチェロアンサンブル以外では
ファゴット、ホルン、コントラバス、ハープ、サックス、トロンボーン。
これらが必ずしも人気がないとは思えないけど、
もしかしてもしかして「こんな楽器だよ!!」と
アピールしたかったのかもしれない。
最後はファゴット、サックス、トロンボーン、ホルン、ピアノの先生の伴奏つき
「ジングルベル」(フランス名「vive le vent」)だった。
やっぱり先生はうまいなあ~。
ファゴットはどういう曲をやるときでも
最初にファゴットのメジャーソロを披露するのがお約束なんだろうか。
(この先生も「ピーターと狼」のおじいさんのテーマをひと吹きした後
ジングルベルの前奏に入った)



さて、この合唱の日頃の練習だが、
楽譜はなし、歌詞も配られたり黒板に書かれることなく、
全て耳で覚えてきているのだそうだ。
まだ楽譜が読めないのだからしょうがないとはいえ、
それで6曲も歌いました。

確認テスト


ゆりちゃんはすっかり先生になついているし、
何しろ楽しく通っていたので、
ここが学年末には進級テストもあるような
厳しいところだということをすっかり忘れていた。
そんなとぼけた私に年明けに
ゆりちゃんとクラスメイトのベトナム人のママが
「年末のテストでうちの子とユリがクラスで一番だったのよ」
「アジア人がフランス人を凌駕しちゃったね」(クラスでアジア人は二人だけ)
と教えてくれた。
テストって何?
全く知らなかった私は慌ててゆりちゃんにファイルを見せてもらうと
今までやった音階やリズムの確認テストが入っていた。
音階は楽譜に書いてある五つの音を聞いて、
その中で間違っている音を正しく書き直す問題、
(間違っている音符を指摘するだけではないのだ!)
リズムはゆりちゃんはディクテだと言っていたけど、
聞いたリズムを音符に書き表す問題。
同様に調音の問題。
あとは譜面どおりに歌う問題だった。
これで30点満点で28点だったのだ。

私がすごいと思ったのは、
最初の楽譜の間違えを直す問題。
たかが五つの音というなかれ、
まだ音楽について習い始めて日が浅い上、
音と楽譜の一致がしているかどうかも怪しいのだ。
でもゆりちゃんはこの問題は全部合っていた。
かつてファ、ソ、ラの三つの音を習ってきて
いろいろな並び方の楽譜を自宅で練習する宿題が出たとき、
ゆりちゃんはファ、ソ、ラ、ソ、ファという五つの音が
音階が上がって下がる、という風に歌えず、
最後には泣いてしまったのだった。
そんなゆりちゃんがここまでできるようになっていたのは
正直に言って本当に驚きだった。