健康診断

幼稚園から健康診断のお知らせが来た。
日時が指定してあり、その時間に親が幼稚園に出向き、
子供をどこかしらでピックアップして、
園内の保健室へ連れて行って受ける。
つまり個人検診。
持ち物はお決まりのcarnet de sante(フランスの母子手帳)、
他に予防接種証明書などがあればそれも持参。
我が家は日本の母子手帳も持参した。

<馨の場合>

園内に保健室までの矢印案内が出ているので、
それに従っていくものの、まるで迷路。
行けども行けどもたどり着かない。
不安になって途中で何度も聞く。
やっとこさ着いた先は隣の小学校の中。
うちの幼稚園は隣接して小学校もあり、
一貫教育みたいになっている。
付属幼稚園のある小学校と言った方が分かりやすいか。
そういうわけで、どうやら二つの校舎はつながっていたようなのだ。

中には先生(女医さん)と看護婦さん。
先生は予防接種のチェックを始め、
妊娠出産の経過まで聞いてきた。
英語が話せたのだが、早口ですごいフランス語なまり。
なんと言っているのかわからなくて何度も聞き返した。
馨はその間お絵かきをさせてもらい、
その後聴覚視覚の検査。
これは日本の三歳児検診と全く一緒。
聴覚は耳元でささやいた小さな声が聞こえるかどうかのテストだったが、
言われる言葉がフランス語で馨には全然分からない。
テストする前に先生が一通り読んでくれたが、
一回じゃ覚えられるわけがなく、
何を言われてもバナナの絵を指さす馨。
おかしくて笑いそうになるのを懸命にこらえる。
一応左右の耳やったのだが、「テストにならない」ということで保留。
一方視覚の方は3メートルくらい離れた先から見せられた形と同じ物を
手元に渡された紙の中から選ぶというもの。
これはパーフェクト。
先ほどのお絵かきは知能の発達を見るためのテストだったようだ。
その後発達状況を見る質問いくつか。
色の名前には3色答えられればOK。
馨の場合は日本語で答えたのを私が翻訳。
緑のことを「メロン」という子なのだが、
まあ分かってるってことで「vert」と翻訳してあげた。
おもしろかったのは「彼は自分が男の子だとわかっているか?」という質問。
たしか「馨は男の子、ゆりちゃんは女の子」って言っていたなあと思って
分かっていると答えたのだが、
帰ってから聞いてみたら「馨は女の子」なんて言っていた。
言葉の面については
フランス語は幼稚園に入って2ヶ月足らずで判断しかねる、
日本語で文章をしゃべっているのならそれでよいと言われ、
これで終了。

<ゆりちゃんの場合>

今回の先生はおじいちゃん先生。
看護婦さんは前回といっしょ…かな…(よくわからない)。
ミニスカートのおよそ看護婦さんらしくない人で、
ゆりちゃんも気を許したのかご機嫌だ。
先生は私のつたないフランス語を聞いて
英語はしゃべれるかと聞いてきたのだけど、
私の答え方が悪かったのか英語はしゃべれないと思われ、
終始フランス語で検診は進んでいく。
看護婦さんはフランス語オンリーだ。
私が先生と話をしている間、
同じように紙を渡されてお絵かきしたが、
ゆりちゃんは明らかにテストという感じ。
b、d、p、qといった微妙なアルファベットを書かせたり、
○や△、くるくると曲線を書かせたり。
人の顔を描くというのもあって、
bon hommeというのがよくわからないゆりちゃん。
なるべく先生の言ったことを理解しているか見たかったので
看護婦さんが説明してくれているのに口をはさまなかったけど、
どうしてもわからないようだったので
「顔を描くんだよ」と教えてあげる。
隣に私がいるせいか、内容説明を私に求めがちだ。

先生の質問はやはり妊娠出産までさかのぼった。
話をしている間にゆりちゃんは看護婦さんと隣室へ。
聴覚テスト。
戻ってきて今度は視覚テスト。
看護婦さんから先生に代わって身体的な発達チェック。
先生が「つま先で歩いてごらん」
「かかとで歩いてごらん」
「両手を左右に広げて交互に鼻に近づけてごらん」
などなどとリクエストを出す。
もちろん先生も身振りを交えて言うのだけど、
ほとんどすぐにやってみせた。
それから先生の言った簡単な単語を繰り返す。
きちんとできた。

先生はゆりちゃんの書いたお絵かきを見てとても誉めてくれた。
検診結果も「とてもよい。何の問題もない」とのこと。
フランス語のことになって、
いつから住んでいるのか、幼稚園にはいつから通い始めたかなどを話し、
幼稚園でフランス語を話さないので先生に問題視されていることも話す。
先生はそのことについていいも悪いも言わなかったけれど、
少なくとも検診内容については心配する点はないということだった。
(聴覚視覚テストもパーフェクトだった)
これが小学校にあがれるかどうかの検診ではなかったが、
医学的に問題がないことでちょっと味方を得た気がした。

あとで聴覚テストってどうやってやったの?と聞いたら、
指で輪を作り、指をくっつけたり離したりすることで
音が聞こえる聞こえないを表したのだそうだ。
馨のテストに比べてやり方が難しい。
もちろん身振りを交えて説明されたのだろうが、
それをちゃんとゆりちゃんは理解できたのだ。

ここからは後日談、しかもかなり推測の混じった話。
検診の次の日、看護婦さんがゆりちゃんのクラスに来て
担任の先生と話をしていったのだそうだ。
そのとき「ユリって言ってたよ」とのことで、
どうやら検診結果、もしくは私の訴えが伝えられたらしい。
同日夕方には担任の先生と園長先生の密談を目撃。
そこでこの話がさらに伝わった可能性は低いけど、
訴えた効果はあったものと信じたい。