手紙は書いたけど…

ゆりちゃんが最近「園庭で男の子がいじめる」とたびたび言うので、
単なるふざけあいなのか子供のけんかの範疇なのか分からなかったけれど、
それと前後して急に体中に湿疹が出始めたので、
ストレスがたまってるのかもしれないと思い、
先生に手紙で知らせることにした。

担任の先生は英語が片言しかしゃべれないし、
フランス語で書いたほうがインパクトあるだろうと思って、
マリーナの夫クリストファーに翻訳してもらう。
そこで「いじめられて萎縮してしまっているのも
フランス語をなかなかしゃべらない原因の一つではないかと思う」と
書いてもらったのだが…。

手紙を渡した数日後、園長先生に呼ばれる(以下英語)。
「手紙にはこう書いてあるが、違う」と言うのだ。
「ユリはいじめられても先生に言わない。
フランス語ができれば先生に言えるはずだ。
フランス語ができないからいじめられても何も言えないのだ」と言う論理。
私はさすがに頭に来て、
「彼女は先生に訴えていると言うし、先生も知っていると言う。
フランス語をしゃべらない原因の全てがいじめにあるのではなく、
あくまで原因の一つではないかと思っているに過ぎない。
彼女はいじめられてすごく神経過敏になっている。
フランス語をしゃべらないからいじめられるのではなく、
いじめられるからしゃべらないのだ」と言ってやったのだが、
「それはフランス語をしゃべらないからだ」の一点張り。
おまけに
「園庭で遊ぶときは150人くらいいっぺんに遊ぶ。
とても目が行き届かない」とぬかしたのだ。
事実目が行き届かないとしても「これからは気をつけてみます」とでも
社交辞令でもいいから一言言って欲しかったのだが、
それをフランス人に期待するのは間違いだったか。
とにかく園に手落ちはないというそぶりだった。

あまり頭に来たので、
それまで園長室の外で遊んでいたゆりちゃんを呼んで、
ちゃんと先生に訴えていることを言わせようと思ったら、
先に園長先生がゆりちゃんに何かフランス語で言い始めた。
怒っているようなとても怖い言い方だった。
ゆりちゃんは明らかにおびえた感じだったが、
聞かれたことに対して「アントワーヌ、ルカ…」と名前を言い始めた。
ゆりちゃんをいじめる子の名前だった。
それから園長先生は
「これからはいじめられたらすぐ先生に言うのよ?分かったわね?」と言い、
ゆりちゃんはうなずいた。
その後私に向かって英語で
「ユリに誰がいじめるのか聞きました」と言っていたので、
ゆりちゃんはあんな難しい質問もわかるんだ!すごいぞ!と思った。
同時に
このやりとりをしても園長先生は
ゆりちゃんがフランス語をしゃべらないのが問題だと思い続けているのだろうか?と
ちょっと悲しくなった。

幼稚園を出てからゆりちゃんに
「これからはいじめられたらやり返すんだよ。
先生は守ってくれないから自分のことは自分で守るんだよ。
それでもダメだったらママに言うんだよ。
ママがやっつけてあげるから」と言った。
こんなことを言いたくはなかったが、しょうがなかった。
園に、特に園長先生に不信感を抱いた出来事だった。
今後は絶対に園で英語は使うまいと誓った。
フランス語がしゃべれない親と軽視されている気がしたからだ。