温泉?

ハンガリーは温泉が豊富なのだそうだ。
と聞いたら行かずばおれまい。
さっそくホテルのフロントで聞いてみる。
フロントのおじさん、一応英語はしゃべれるが、
果たして通じているのかちょっと不安。
「今の時期有名なところは混んでるからね~、
ちょっと郊外に行ったほうがいいよ」と
ダンナは教わってきたらしい。
ではその郊外に向かってみよう。
わざわざ温泉に入るために持ってきた水着もしっかり持参。

最寄の市電に乗る。
しかし一駅で終着点。
他のお客さんが「ここが最後よ」と教えてくれたのだ。
緑の電車に乗れと言われてきたらしいが、
それはこれではなかったのか?
終着点のすぐ側に地下鉄とおぼしき入り口がある。
そこに入ってみる。
中はサングラスをかけていなくても薄暗くて怪しい。
少なくとも観光客の来るような場所ではなさそうだ。
しかも、そこにある乗り場が一つではない。
一体どこにいったら目的地につけるのか?
切符売り場とおぼしき窓口で聞いてみる。
目的地を言ったら切符が買えたらしい。
しかし乗り場はどこなのか?
なんとなく人の流れについていってみる。
するとそこに緑の電車が!!
これがそうだったのか。
しかもここは始発駅らしく、方向は一つ。
ちょっと安心して乗る。

電車は田舎の電車という感じで
座席は4人向かい合わせ。
そしてなんと自動ドア。
なんだか日本にいるような気分。
隣り合わせたハンガリー人が
なんと二週間前に日本から帰ってきたばかり、
京都の音楽祭に出演していたピアニストだと言うではないか。
彼に行き先を見せたら自分の降りる次の駅だということ。
合っていたらしい。
彼はローマ遺跡のあるアクインクムという駅で降りていった。

さて目的の駅に着く。
たくさん人が降りたし、一方向に歩いていくので、
間違いないだろうとそれについていく。
そしてついたところは…市民プール?



間違ったか?
どう見ても間違っている↓。



スライダーもついていて子供心をくすぐるこのプール、
子供が入らないわけがない。
もしかしたらこの中のどこかに温泉があるのかもしれないと
淡い期待を抱きつつ入場券を買う。
表にプールの水温が示してあって、
それによると8つくらいプールがあるらしい。
ハンガリー語で書いてあるからよく分からないが、
中の一つくらい温泉だったりするのだろう。
外国の温泉は日本より温度が低いと言うではないか。
30度前後でもハンガリーの温泉はそんなものなんだろう。
うちは温泉に来るつもりで、
温泉だったらタオルくらい常備してるだろうと、
水着のみでタオルがなかった。
入り口の料金表示にタオルがどうとかという料金があったので、
それを一つ買ってみたのだが、
窓口のおばちゃんがまるで英語ダメで、
それはとうとうなんだかわからなかった。
もちろん中にタオルを始め、水着まで売ってる売店がありました。

更衣室はもちろん男女別だが、ロッカーおばちゃんがいて、
入場券のレシートを見せると空いているロッカーを教えてくれる。
うちは最初私が様子見を兼ねて子供を連れて女子更衣室に行ったので、
レシートを見せるときうっかりダンナの分まで見せてしまった。
これは夫の分です、ともちろん英語で言ってもフランス語で言ってもダメ、
でもこれはダメなの、と一生懸命ジェスチャーを交えて説明、
おばちゃんはあきらめてくれた(少なくとも理解してもらえてない)。
着替え終わっておばちゃんに言うと、
おばちゃんがカギをかけてくれる。
帰るときはまたおばちゃんに声をかけてあけてもらうシステム。
各自でカギ管理しなくていいのは楽だけど、
とっさに開けたいとき、おばちゃんがいなかったらどうなるの。

ハンガリーの市営プールにもちろん観光客なんていません。
ましてやアジア人なんかぜーんぜん。
すっごくめだっていました。
でも暑いときにプールが楽しいのはどこの国の人も同じね、
すぐそんな人種の違いなんて忘れる。
子供たちは思わぬところでのプールに大喜び。
ダンナがすきをみて温泉を探して回ったけど、
やはりここにはない。
ここはプールだよ、プール。

すっかりハンガリー市民の一日、を堪能して帰る。
帰り、隣のアクインクムの駅でダンナが
「ここに温泉の看板があったんだよな~。
駅前のホテルに温泉があったみたいだよ」と言う。
やはり有名であろうと五つ星のホテル内であろうと、
確実にあると分かっているところに行かないとダメだったのだ。
でもプールも悪くなかったけど。

後日この話をフランス語の先生にしたら、
フランス語の場合だけど、温泉と言いたい場合は
bain(お風呂)と言わないと通じないということだった。
spa(スパ)という単語は今では日本でなら
たいてい通じるかもしれないけど、
他の国ではどうか分からない。
事実、フランス語の先生も最初わからなかった。
フロントのおじさんもプールだと思ったのだ。だから、
「今の時期有名なところは混んでるからね~、
ちょっと郊外に行ったほうがいいよ」

と言ったのだ。
確かに彼の言うとおりだった。郊外でも混んでいた。